開発日誌第1回  MDDR

たんていくんvol.2では、シナリオ作家は4名体制です。今後さらに増えるかもしれません。現在の所、扱う事件の種類や時代背景について話を詰めています。
これと並行して、うち2名の作家で、MDDRを大きく進化させる試みについて議論を進めています。最終的に、プログラマとの会議によって却下になる可能性もあるのですが、なかなか面白いアイデアが出ています。今回はこれに触れてみたいと思います。ここでは次回作の内容をあまり詳しくお話しする事は出来ませんので、ある程度抽象的な説明になるかもしれません。その点はご理解頂きたいと思います。
MDDR1.1。実は、以前検討してボツにしたシステムです。今回新たに参加したスタッフの一言から、これが再び陽の目を浴びる事になりました。(またボツかもしれないけど…)

「連続殺人事件とか、連続爆破事件とか、そういうの作りましょうよ」

これは、推理小説や普通の推理ゲームなら朝飯前ですが、たんていくんでは恐ろしく難しいのです。私個人としては、これを聞いた時点では「無理だな。やめとこう」と思いました。
なぜ難しいのか?それは、たんていくんは「プレイヤーはストーリーを追わなくていい」という独自の概念を持っているからです。ゲーム中では、物語に流される事なく、自由に考え、行動する事が出来ます。ですから、前作では劇中の時間が経過するにも係らず、「新たな物語・新たな人物・新たな物証」が忽然と登場する事はありませんでした。AVG・RPGと根本的に違うのはここです。

連続○×事件というのは、文字通り何かの事件が連続して起きる事を指します。(そりゃそうだ)これはプロローグ部だけでなく、本編中で各事件をプレイヤーに「強制的に押し付ける」事になります。自由に推理・捜査するという、たんていくんの大原則に反してしまいます。
しかし、一方の推理小説・従来の推理ゲームでは、このような「状況の変化」自体が、作品の大きな魅力となっています。物語なのですから当然です。最初から最後まで、何の変化もない物語はつまらないでしょう。

常識的に考えれば、両者は相反する物だと言えます。私達も一度は諦めました。
しかし、先のスタッフの一言で、もう一度だけ考えてみようと思い立ったのです。たんていくんの基本システムをスポイルする事なく、「物語性」を組み込む方法はないでしょうか。さらに、その物語性に何らかの意義を持たせたい…私達は考えました。そして、やっと思いついたのが

  全く新しいフラグ概念(名称未定)

です。従来の推理ゲームにおけるフラグは、多くの場合「物語を分岐させる」あるいは「物語を進展させる」ために使用されます。この考え方自体を変えたらどうでしょうか。フラグを、条件分岐の目的以外に使用するのです。
一体何なの?一応は企業秘密(爆笑)なので、あまり細かくは言えません。しかし、この新システムを使うと、次のような事が実現出来ます。たんていくん次回作をクリアした二人の会話を想定しています。


■プレイヤーAさん:
「ねえ、Bさんも、たんていくんの新作クリアしたんでしょ?連続殺人事件の謎、どうやって解いた?」

■プレイヤーBさん:
「えっ、連続殺人?おかしいな…事件なんて一つしか起きなかったよ?えらく短いゲームだったね」

■プレイヤーAさん:
「どういう事?犯人は○○で、動機は○○、その証拠は××だよね」

■プレイヤーBさん:
「うん。確かにその通り。間違いないね。それらは全て、ゲームの冒頭ですぐ解ったよ」

■プレイヤーAさん:
「凄い推理力だね、Bさん。それじゃあ、Bさんは早期に真相を見破ったから、そこで事件が解決して、後の被害者が出なかったのか…」

■プレイヤーBさん:
「でも、Aさんだって、タイミングは遅かったかもしれないけど、最終的には犯人を特定した訳だよね。動機や証拠も全く同じ」

■プレイヤーAさん:
「という事は、二人は全く別と言っていいストーリーを体験したのに、推理その物には全然影響がなかったという事なの?」

■プレイヤーBさん:
「そうなるね。第二・第三の事件が起こって、物語が進展しているのに、推理の条件は常に一定で、有利にも不利にもならないという事だね。これは現実の事件と同じ構造だよ。ストーリーが勝手に展開していって、プレイヤーがそれを追っていったとしても、解決には直結しないという事だよ。それどころか、物語は推理を全く左右しないと言ってもいい」

■プレイヤーAさん:
「よく解らないなあ」

■プレイヤーBさん:
「だからさ、Aさんは物語が進展して、新しいヒントとか証拠が出て来た事でクリアしたんじゃないって事だよ。Aさんの力でも、私と同じく冒頭でじっくり考えれば解けたはずだって事さ。多分、第二・第三の事件は、作者にとって単なるダミーに過ぎないんだよ。これらの被害者は元々、事件解決に重要な人物じゃなかったというメカニズムだよ」

■プレイヤーAさん:
「それは変だなあ。自分の場合は、第三の被害者が出たからこそ、真相を思いつく事が出来たんだよ。つまり、その人はゲーム中で、明らかに重要人物だって事じゃないの?その人が殺されなかったら、きっとクリア出来なかったと思うよ」

■プレイヤーBさん:
「あれれ?じゃあこのゲーム、一体どんな仕組みになってるんだろう?不思議だなあ…」


という訳です。(コントかよ…)お解りでしょうか。つまり、私達作者(というか犯人)が「連続殺人」を起こそうとしても、優れた探偵(プレイヤー)ならば、それを阻止する事が出来るのです。結構やりがいのあるシステムではないでしょうか。

勿体ぶる訳ではないですが、今回はここまでです。
この「開発日誌」は、今後も時折掲載していくつもりなのですが、果たしてどうなる事やら…。「続けろ」とか「やめとけ」とか、皆さん何かしらメール下さい。
ほな。


バックナンバー

 コラムトップへ戻る