北山歩誘拐事件



 今回リリースする第1作は、「北山歩誘拐事件」です。舞台となる町は、近海にぽっかりと浮かぶ人工島・汐実(しおみ)地区です。
 もともとは空港建設用に埋め立てられた島で、その後ある事情により開発工事が中止に。数年後、やや狭いながらも住宅地として再生しました。本土とは6キロメートルにもおよぶ日本有数の長さを誇る「汐実橋」で繋がっています。コンクリートで固められた背の高い島岸には船をつける場所もなく、汐実橋が外界への唯一のルートとなっています。


汐実全図

ミステリ通の方ならもうお気付きでしょう。多分世界一安直かつ強引に作られた「雪の山荘」だと思います。
このプロジェクトが「小説的」な部分を全く追求していない事がお分かり頂けるでしょう。推理する事のみに特化したゲームです。それ以外の面は徹底して削ぎ落としています。
下のボタンを押すと、汐実地区を簡単に探索出来ます。
 

 この閉鎖的な特殊地形を背景として、あなたは独力で事件解決への戦いを挑む事になります。あなたは時間の許す限り、マップ上の430か所以上で、1000人以上の人々に話を聞く事が出来ます。(注1)また、今回のゲームの表面には現れませんが、全ての登場人物には生年月日・経歴・趣味・交友関係・生活パターン等詳細なパラメータが設定されています。私達作者は、これらの緻密かつ膨大なデータをもとに各人の証言を生成しています。

(注1)1000人の中には、訪問しても不在で話が聞けない場合もあります。これは作者が住民各人のタイムスケジュールを参照し、捜査開始時点で汐実外に脱出している・逆に事件のため汐実に入れない・既に職場に移動している等と考えられるケースです。





 三流出版社に勤める主人公・北山京介のもとへ一通の手紙が届きました。「青き虎」を名乗るテロリスト集団からのもので、お前たちに天罰を与える、用心せよという犯罪の予告状でした。その直後に小学生の息子が誘拐されます。ほどなく汐実橋が爆破され、汐実は外界から孤立してしまいます。さらに、各所で連続爆破テロを行う旨の犯行声明が青き虎から宣言されます。不運な事情が重なり、北山はたった一人で行動を開始する事になりました。警察の協力はほとんど望めません。子供には先天的な持病があり、長時間放置しておくと生命の危険さえ生じます。タイムリミットはわずか8時間。平凡な会社員である北山の武器は、頭脳と足のたった2つだけです。(製品版では設定の一部が変更される場合があります)



クリックすると拡大します。(画面は最新バージョン1.4の物です)
※普通のAVG風なのは冒頭のみです。後は至って地味な展開。(笑)


ゲームシステム



 このゲームの目的は、推理や捜査によって事件を解決し、誘拐された北山歩(きたやまあゆみ)少年を救出する事です。歩の父親・北山京介(きたやまきょうすけ)を操作して、汐実地区にいる人々に話を聞き、その情報をもとに犯人を推理して下さい。今回のゲーム内でプレイヤーに出来る事は、地元の新聞を読む・電話帳を見る・移動する・人から話を聞く・そして容疑者に直接対決を挑み真相を指摘する…コマンドの種類としてはわずかこれだけです。ルール自体は実に単純で分かりやすいと思います。

 ただ、従来の推理ゲームとは大きく違う点があります。それは、たんていくんには物語分岐や演出のためのフラグ・イベントが全くないということです。つまり、あなたがどれだけゲームを進めても、新たに行ける場所が増えたりする事は一切ありません。ゲームの途中で何かのイベントが起きて、それをクリアする事で犯人にたどり着けるという事も絶対に起きません。
 また、汐実地区の人々は終始一貫して同じ話しかしません。これはどれだけゲーム中の時間が経過しても、何度か繰り返し聞き直しても同じです。全ての登場人物はゲームの最後までたった一つの台詞を繰り返すのみです。 

私達が、単調にも思えるこのシステムを敢えて採用しているのは、「捜査・推理」の楽しさを「物語」の楽しさより重視したいと考えているからです。



 もう一つ、このゲームには特殊なシステムがあります。それは「MDDR(全方向型捜査システム)」という物で、普通のAVG系の推理ゲームと違い、一本道ではないという事です。一般的なRPG・AVGなら、例えば人物Aの所へ行くと(間接的表現であっても結局は)次にBの所へ行けと言われ、さらにCへ…と物語をたどりながらある程度は捜査を進めていく事が出来ます。しかし、たんていくんは違います。Aの所へ行けば必ずしも次の行き先を指示してくれるわけではありません。

 もちろんこのゲーム中の人々も、いろいろな場所や人について示唆してくれる事はあるでしょう。しかし、そこに行くかどうかを決めるのはあなた自身の判断です。そして、行く行かないでゲームの展開や結末が変わる事は決してありません。「物語」に従って進む必要が全くないのです。それどころか、ほとんどの場合において、プレイヤーはどこへ行き誰の証言を聞くべきか、劇中の誰の力も借りずに自分で決めなくてはなりません。自発的に考え、積極的に行動しない限り、このゲームは全く進みません。一般的な推理ゲームと根本的に違うという事がお分かり頂けると思います。

 RPG・AVGで最近よく使われる「マルチシナリオ・マルチエンディング」のシステムとも全く異なります。このゲームには、プロローグなどごく一部分を除いて、そもそも「シナリオ」なる物が存在しません。プレイヤーがこのゲームを通じて考える事、行動する事、それ自体が物語となるのです。作者から与えられるのではなく、あなたが自分自身でストーリーを作っていくのです。慎重に一歩一歩足場を固めるもよし、思い切って大胆な行動に出るもよし、あなたの自由な推理・捜査を実現するために、このようなシステムを採っています。



 このゲームには制限時間があります。現実の誘拐事件と同じく、一刻も早く人質を助け出す必要があります。やみくもに動き回っていたら、すぐにタイムオーバーとなるでしょう。ですから、まずよく考えてから行動する事をお勧めします。例えばある人物の身上について知りたければ、勤務先を調べたり近所の人に話を聞いたり等、いろいろと方法を考えてみて下さい。どのように考え行動しようとも全てあなたの自由です。時間のロスという以外には、あなたにはいかなる不利益も生じません。そして直接対決に出て犯人を指摘するタイミングも自由です。天才的なひらめきでゲーム開始直後にいきなり指摘しようが、時間をいっぱいに使ってじっくり捜査した後に指摘しようが構いません。どの場合でも、あなたが推理した真相が正しい限り事件は必ず解決出来ます。これもたんていくんの長所の一つだと思います。

 自由にプレイ出来る事が、このゲームの最大の長所です。あなた独自の推理で挑戦してください。