雪の山荘って何?


博士、雪の山荘物っていうのは、閉鎖空間内で事件が起きるパターンの総称ですよね。


そうじゃ。
他にも「嵐の山荘」とか「絶海の孤島」とか、呼び方はさまざまじゃな。ミステリに詳しくない人のために、少し説明しておこうか。
これは一時的に外界から孤立した世界を作り、そこで事件を起こす手法じゃ。外部への出入りが出来ないのじゃから、犯人は限られた範囲の中に必ずいる事になる。推理によって真相を暴くのに非常に都合がいいんじゃ。
それに、サスペンス性が得られたり、登場人物が追い詰められていく心理描写が楽しめたりという副次的な利点も大きいぞ。


でも、どうしても不自然に見えますよね。そうそう犯人なり探偵なりに都合のいい状況が生まれるというのは、現代社会ではなかなかありませんワン。


閉鎖空間をいかに自然に作り出すかという点では、プロの作家も苦労しているようじゃ。
いい加減に作ると、辛辣な読者から「ご都合主義」と攻撃されるしのう。ミステリを作るのは大変じゃよ。


今回のたんていくんでは、その「雪の山荘」状態を採っていますね。
しかし、これほど安直なやり方は見た事ないですワン。(呆)
近海に浮かぶ人工島…。(笑)


まあ、いいではないか。
物語のない、純粋に思考のみで解くゲームを目指しておるんじゃ。私は率直にいって「舞台の不自然さ」は全く気にしておらん。
その舞台の存在自体が論理上おかしいという事がなければ、別に構わないと思っておる。


博士は、このマップのあり方についてはどう考えているんですか?
今回の作品は登場人物1000人位ですけど、広さや人数に関しての話を聞きたいワン。


これは残念ながら、理想にはほど遠いな。
私はたんていくんのマップの規模については、だいたい人口1万人位が適切ではないかと思っておる。面積については、今の3〜4倍位でどうじゃろうか。つまりそう面積を広くする必要はなく、高層住宅を設置して人口密度を上げる方が面白いと思うぞ。


人口1万人というと、今回の約10倍ですか。
そんなに必要なんですか?


うん。今回の1000人というボリュームは、単に開発スタッフの人数や労力から「この辺が限界ではないか」と考えて決めただけじゃ。
住民個々のパラメータを製作するだけでなく、互いの人間関係やタイムスケジュールを作るとなると、どうしてもこれ以上は無理じゃった。
だが、正直いってもう少し増やしたい。


そうですか?
そりゃあ、マップは広いほど楽しみが増えると思いますけど、今の規模でも十分な感じもしますよ。
たんていくんのようなゲームシステムの場合、あまり広げ過ぎると難解になるような気がしますワン。


実はな、プレイしてくれた人の中には、「マップ上をあちこち動き廻れて楽しかった」という意見も少なくなかったんじゃ。
確かにそういう副次的な遊び方も出来るじゃろうが、これは私としては残念じゃ。


どうしてですか?


やはりプレイヤーに対し、「やみくもに動き廻ってもどうにもならない。頭を使い、深く考える事を基本線とする以外にない」と思ってもらえるような設定にしたかったな。
私達としても、制限時間を設ける等いろいろと涙ぐましい努力はしとるんじゃが、それでもなお「じっくり考えようなんて全く思わなかった」という人も結構多かったみたいじゃ。
次回作で即実現とはいかないが、近い将来何とかマップ人口を増やし、「推理以外に道はない」という事件を作りたいと思うぞ。


博士、考えてみるとたんていくんのようなシステムでなく、従来の推理AVG形式であれば「じっくり考えさせる」事その物は簡単ですよね。
何やえらい遠回りしてますやん。


むむう。(汗だく)
しかし、「捜査」と「推理」を同一視するところにこそ、推理ゲームの未来があると思うんじゃ。
うまい説明が思い付かんが、現実社会における推理能力というのは、一歩目で大きな個人差が付くと思うぞ。ここが面白いと思うんじゃが。


推理に常道はないという事ですね。
それは何か分かるような気がしますワン。推理って、どうも掴みどころがないですよね。厳密なセオリーを体系立てた物というのでもないような感じだし、経験則とも何か違うし…。確率論や心理学…うーん、やっぱり違う気がするワン。


今回のマップ規模では、「何百回かリプレイすれば総当たりでも解けるぞ」と考える人も出てくるじゃろう。
私達作者はそれを最初から諦めさせる事、「絶対に推理で解くぞ!」と決意させる事が必要になるじゃろうな。
前にも述べたが、推理という物は「推理で解くしかない」ケースでのみ初めて意義を持つんじゃ。




たんていくんはまだ生まれたばかりだワン。
これからどんな方向へ進化していくのか、ちょっと楽しみですね。