本格ミステリと難事件と名探偵?


さて、今回はミステリに重要な「事件」を中心に話をしよう。
ポチ君はどんな事件が好きかな?


もちろん、ミステリの中での話ですよね?
だったら、やっぱり「難事件」とか「怪事件」かなあ。ワシ個人としては派手な「不可能犯罪」が一番面白いと思いますワン。少なくとも、現実に起こり得るような地味で単純な事件はつまらないですね。


なるほどね。ところが、残念ながらたんていくんには「難事件」は登場しないんじゃよ。


え?そんなアホな…。
それじゃ、やりがいがないじゃないですか。ゲームなのに地道な捜査をやったって面白くはないでしょう。


まあ、そんなに結論を急がないでくれ。
現実の世界で考えてごらん。「難事件」って、いったい何だと思う?


そんなの決まってるでしょう。「難事件」なのだから、「解くのが難しい事件」じゃないですか。…あれれ?


どうやら気付いたようじゃな。「難事件」という物は、現実には存在しないんじゃよ。もちろん、捜査の結果として「解決するのにえらく手間取った事件」はある。じゃが、それが最初から即ち「難事件」だったわけではない。


なんかおかしいという事には気付いたけど、そこから先は…今ひとつよく分からないワン。


捜査にあたったメンバーが、もっと優秀だったらどうだったかな?
大して苦労せず、あっという間に真相を突き止め、犯人を逮捕したとは考えられないかな?もしそうだとしたら…。


だとしたら…あっ!難事件でも何でもない!全く同じ事件なのに…。


そうなんじゃよ。それが「難事件」の正体じゃよ。
ミステリの中に登場する「難事件」は、作中の人物達によって「これは難事件である」と認定されるんじゃ。読者がどう思うかには直接関係ないわけじゃ。


そうか!分かったワン!
もし、ミステリの中の探偵役が冒頭で「こんなの簡単じゃん。すぐ解けちゃう」とかいい出したら、次のページで話が終わってしまうワン!
なるほど…今までどうも変だと感じてたのはこれなのか。多くの本格ミステリに登場する探偵は「天才型」だけど、その割にはいつまで経っても事件を解決出来ないワン。本当の天才だったら、わずか数ページで真相に至ってしまい、とても小説として成立しないんだ!


たんていくんには、ミステリでいうところの「探偵キャラクター」は登場しない。厳密には、プレイヤーが操作する「主人公」は存在するが、この主人公には決まった能力値が設定されていないんじゃ。プレイヤーの人間的な才能が、主人公にそのまま反映されるんじゃよ。
どんなに複雑怪奇な事件でも、腕の立つプレイヤーにかかれば「難事件」にはならないんじゃ。


主人公が「天才的な探偵」になるか、「平凡な小市民」になるかは、プレイヤーの頑張りによって決まるんですね。
…こんなシステムって、今まで見た事ないワン!


たんていくんのこのようなシステムを、厳し過ぎるのではないかと心配したスタッフもいたんじゃが、私はそうは思わんぞ。本来、クイズとかパズルとかいう物はそうした性格を持っておる。推理も同じじゃろう。誰でも努力なしに簡単に解けるのでは価値がないと思うんじゃ。「こんなの不可能だ」と思うような事にこそ、勇気を持ってチャレンジして欲しいな。推理力という物が、難関を突破するのにいかに大きな武器となるかが分かるじゃろう。


たんていくんって、文字通り「推理出来る」ゲームなんですね。しかも、何のヒントも与えられない…。


それが推理の本当の姿じゃよ。ヒントは自分で探すんじゃ。どうやって探すのか…それを考えるのも推理じゃよ。


確かに従来の推理ゲームよりはずっと厳しいけど、それだけに挑戦したいという気にもなってきますね。




今まで皆さんから届いたメールの中には、「難しくて全く歯が立たない」という物もあれば、「あっという間に解決した」という物もあった。こうして大きな個人差がつくのが、たんていくんの特徴じゃ。私はこれを長所だと思っておる。
でも、臆する事はないぞ。それに、すぐに解けなくたって恥じる必要はない。諦めずに頭脳をフル回転させる事を続けていけば、時間はかかっても必ず解けるはずじゃ。そうやって少しずつ腕前を磨いていけばいい。たんていくんの次回作では、ぜひ私を返り討ちにしてくれ。